久しぶりに読書

知り合いの税理士さんの家の本棚にあった向田邦子のエッセイ集『父の詫び状』を借りて読んだ.著者は昔の事をよく覚えているなぁと感心した.一つのエッセイの中で色々と話題が飛ぶけど,最後にはそれらがキュッとまとまって,タイトルを見返すと「あぁ,そういう意味か.」と納得する.同じことを,沢木耕太郎氏の書いたあとがきにも書いてあった.あとがきまで素晴らしい本に初めて出会った,と言ってもいいくらいに,沢木耕太郎の書いた文章は素晴らしかった.エッセイ「ねずみ花火」を挙げて,いったりきたりする文章は一つのテーマで書かれているということを,教えてくれる.教えてくれるというのとは少し違うか・・・つまりぼんやり僕ら読者が思っていることを,言語化して示してくれて,向田邦子の作品をきちんと味わえる.

新装版 父の詫び状 (文春文庫)

新装版 父の詫び状 (文春文庫)

特に印象的な話は「隣りの神様」だ.父の死,先輩の死に関する思い出に,どこか人間味のあるしくじりが一緒になって記憶されている.向田邦子の母のしくじりであったり,葬儀中に匂ってくるアジの開きを焼く匂いであったり.
また,ほとんどの話を通して昭和の,戦中・戦後の様子が伺えて,自分の祖父母や父母の過ごした時代の匂いが感じられた.両親に薦めたい一冊だ.